水曜日, 6月 08, 2016

瀬戸へ行かんでどこへゆく/第18回 瀬戸・第九演奏会


 「瀬戸へ行かんでどこへゆく」という時代がありました。働き場となる窯屋が実に沢山栄えていたからです。

 繁栄の源は、明治のウイーン万博はじめ欧米の万博で世界を惹きつけた瀬戸焼独特の絵付と造形、その文化発信力だったと言います。

 だが、いつのまにか廉売競争が大勢となり、遂にはより廉価の途上国に負けてしまいました。
 郷土〝瀬戸〟は、せっかくの文化発信力から引き離されて久しい。

 21世紀前半を進む現代、確かな曙光が見え始めています。
 伝統と新進の陶芸作家の方々。バイエルンやトウキョウで第一級の演奏家となった〝西田 博〟さん。シャンハイの大劇場での上海交響楽団との共演や万博会場そして杭州政府に招かれての杭州公演などでその歴史を刻む〝瀬戸第九合唱団〟。いずれもルーツやホームが〝瀬戸〟。

 800年前、杭州で製陶を学んだ藤四郎は良土を求めて瀬戸に来たって定住。
 〝現代の藤四郎よ、瀬戸に来たれ〟の歌声に応えて日本から世界からアーティストが再び「瀬戸へ行く」ことなくて何処へゆく。
 〝瀬戸〟と〝文化発信力〟は、これから再び結びあいはじめます。

 〝歴史が切り裂いたものを再び結びあわす〟

 第九の合唱は、このシラーの詩文をうたいます。郷土の未来を信じて、今度のコンサートを〝みな兄弟となって〟お楽しみいただければ幸いです。